札幌テレビ放送(STV)は、Inter BEE 2026のFYCSブースにて、自社で開発したワイヤレスインカム・タリーシステム「ShabeTally(シャベッタリー)」をデモ展示します。スマートフォンアプリとRaspberry Pi、マイコンを活用し、低コスト・超低遅延かつ簡便なインカム通話とタリー表示を両立させたシステムです。クラウドVPSを介したデモ環境を、ブースのPCやスマートフォンで実際に操作して体験していただけます。

開発のきっかけ
中継先やリモートプロダクション、小規模な収録・配信現場において、カメラへのタリー表示とスタッフ間のインカム通話は不可欠ですが、専用のワイヤレス機材は高価であり、ネットワーク構築やケーブル配線など設営の負担も大きな課題でした。
予算やリソースが限られるローカル局において、高価な専用機に頼らずとも、身近なデバイスとキャリア回線を活用して「電源を入れればどこでもすぐに繋がる」手軽さと、放送現場が求める「超低遅延のタリー応答」「確実な死活監視」「既存インカム(4Wire)との連携」を両立する仕組みが求められていました。
開発のコンセプト「低コスト・超低遅延・かんたん」
- 汎用デバイスとキャリア回線の活用 :Androidスマートフォン、Raspberry Pi 4、超小型マイコンを組み合わせることで、専用機材に比べて圧倒的な低コスト化と、場所を選ばない機動力を実現しました。
- 多様なスイッチャー環境への柔軟な対応 :サブや中継車の物理接点出力だけでなく、OBS・vMIXなどのソフトウェアスイッチャーや、TSLプロトコル(AMPP等)にも幅広く対応しました。
- 技術局員による完全内製 :放送現場の運用を熟知する局員が、3Dプリンターによる筐体・基板製作からスマホアプリ、サーバー、Web管理画面まで自ら設計・開発し、現場の要望を細部まで反映できる体制としました。
システム構成
クラウド(VPS)上の「サーバー」を中心に、送信側の「Raspberry Pi」、受信側の「スマホアプリ」とカメラ装着用の「タリー表示器」を連携させた構成です。
- サーバー(VPS) :送信元からのタリー信号を受信側へ超低遅延で仲介するとともに、Web GUIによるルーティング管理や、各端末の死活監視を行います。
- タリー接点送信デバイス(Raspberry Pi 4) :物理接点(4系統)やローカルネットワーク内のタリー情報を取得してサーバーへ送信します。本体にはチェック用接点スイッチとタリー表示LEDも実装し、単体での動作確認も可能です。
- スマホアプリ(Android) :キャリア回線等を介してサーバーと通信し、多機能インカム通話を提供するとともに、USB Type-Cで接続したタリー表示器へタリー信号を送出・管理します。
- タリー表示器 :カメラのアクセサリーシュー等に取り付ける超小型・軽量のタリー表示部です。全面・背面のLEDに加え、調光機能付きのVF(ビューファインダー)用miniLEDを備えています。

多彩な運用イメージ
- 接点出力の場合
各サブ、中継車、ベースに送信用Raspberry Piを設置し、スイッチャーの物理接点からキャリア回線経由で出先のカメラにタリーを表示します。 - OBS・vMIXの場合
同一ネットワーク内に送信用Raspberry Piを設置してタリー情報をサーバーへ仲介し、以降は接点と同様に出先のカメラへ表示します。 - TSL対応の場合(AMPP等)
TSL v3.1/5.0プロトコルに対応し、クラウドスイッチャー等からタリーサーバーへ直接データを送信して出先のカメラを制御します。
主な特徴
カメラに装着するタリー表示器は、超小型マイコンを採用した軽量・コンパクト設計です。クラウドVPSを介しながらも、スイッチング操作から約1〜3フレームという超低遅延での点灯(赤/緑)を実現しています。
また、演者や周囲から視認しやすいメインLEDだけでなく、カメラマンが手元で確認できる外付けのVF用miniLEDを搭載しました。本体背面のダイヤルによる調光機能も備えており、明るい屋外から暗いスタジオまで環境に合わせた運用が可能です。

現場の使いやすさを追求したスマホアプリ
スマートフォン1台でインカム通話とタリー確認・制御を完結できます。タリー受信時にはアプリ画面全体の背景色が赤(PGM)・緑(PVW)・赤+緑の上下2分割(PGM+PVW)へとダイナミックに切り替わるため、表示器を繋がないスタッフもスマホ画面だけで直感的にオンエア状況を把握できます。
- パーティライン&個別通話
制作線や連絡線などのグループ通話(パーティライン)の自由な作成・誤操作防止ロック機能に加え、参加者同士の1対1個別通話に対応しています。 - きめ細かな音量・サイドトーン調整
パーティライン全体、個別通話、さらに話者ごとの個別音量調整に対応しています。イヤホン接続時には自分の声の返し(サイドトーン)の音量もスライダーで自在に調整できます。 - Webブラウザからのインカム参加
専用アプリを入れたAndroid端末だけでなく、PCやスマートフォンのWebブラウザからも手軽にインカム網へ参加・通話が可能です。


4Wire連携・ワンタッチ割当・死活監視を備えたWeb管理画面
PCブラウザ上のシステム管理画面(SYSTEM SETUP)から、音声連携やタリールーティング、端末状態を直感的に一元管理できます。
- 4Wireインターフェース
送信用Raspberry Piとオーディオインターフェースを介することで、局内の既存4WireインカムとShabeTallyのパーティライン/個人端末を双方向でシームレスに接続できます。本社→現場の入力音量や現場→本社の出力音量もWeb上から調整可能です。 - Routing Matrix(ワンタッチ割当)
スイッチャーの各入力(IN 1〜4)に対して、どの端末へタリーを送出するかをプルダウン操作ひとつで簡単にアサイン・変更できます。 - Device Status(全端末の死活監視)
送信機や各スマートフォンの「APP / SERVER(サーバーとの接続状態)」だけでなく、「LED / IO(スマホとESP32表示器間のUSB接続状態)」まで個別にリアルタイム監視でき、現場でのケーブル抜けや通信トラブルを即座に特定できます。

ブースで体験できること
クラウドVPSを介した実機デモ環境を使って、スイッチングによる超低遅延タリー点灯からインカム通話、Web管理画面での設定変更までを一通り体験していただけます。
- OBSスイッチング操作
デモPCで画面切替を操作し、カメラに装着したタリー表示器とスマートフォンの即時点灯(赤・緑)と低遅延レスポンスを体験 - スマホインカム通話
デモ用スマートフォンを使って説明員と通話を行い、グループ通話・個別通話の切り替えや、操作性を体験 - WEB管理画面の操作
PCブラウザで管理画面を操作し、タリー送出先のワンタッチ割当変更と、全端末・USB接続のリアルタイム死活監視を確認
実際にスイッチングした瞬間にタリーが光るスピード感と、クリアなインカム音質を、ぜひブースで操作してお確かめください(お手持ちのスマートフォンからWebブラウザ経由での通話参加・聴取もお試しいただけます)。
まとめ
「ShabeTally」は、スマートフォンや汎用マイコンといった身近なデバイスを活用することで、専用機材に迫る超低遅延タリーとクリアな多機能インカムを低コストで実現しました。既存の設備や多様なスイッチャーとも柔軟につながる新システムとして、ローカル局の中継や番組制作の機動力を高めるひとつのモデルになればと考えています。Inter BEE 2026のFYCSブースで、皆さまのお越しをお待ちしております。
