札幌テレビ放送(STV)は、放送用のテロップシステムと直接つながる「AI 校正支援システム」を自社で開発し、2026 年 3 月から局内で運用しています。制作者がテロップを選ぶだけで、AI が誤字脱字・表記ゆれ・テロップ間の事実の食い違いを放送前に指摘します。メーカーにはテロップの文字データを取り出す Web API だけを作ってもらい、AI を使う部分は生成 AI を活用してすべて自社で作りました。
約 6 週間
開発開始から社内公開まで
約 1 週間
フルタイム換算の実作業
150 万超
2026 年 8 月の利用トークン数
背景:放送用システムを「AI-ready」に
当社には校正・校閲の専任担当がおらず、多忙な制作・報道の担当者同士が放送前にテロップを確認しています。テロップシステムの更新に合わせ、この確認作業を AI で支援することにしました。
LLM は日進月歩で、メーカー製品に組み込むとすぐに古くなります。そこでメーカーには「テロップの文字データを取り出せる Web API」だけを依頼し、AI の部分は自社で開発しました。文字を映像にするための装置から、AI が使えるデータを取り出せる「AI-ready な放送用システム」への転換です。
できること
- テロップ一括校正: 項目単位などでまとめて校正し、誤字脱字や、テロップ間の数値・固有名詞の食い違いを指摘
- 日付の整合チェック: 放送日を基準に、曜日や経過年数の矛盾を確認
- ワンクリック学習: AI の指摘への評価から、そのまま局独自のルールとして登録
- 定時の自動校正・ファイル校正: 現場の要望で追加。決まった時刻に校正してメールで通知、Excel や Word も校正可能


仕組み
社内サーバー上の小さなサービス群が、テロップシステムの Web API から素材を取得し、Dify のワークフロー経由で Google Gemini に校正させます。報道部が蓄積している過去のミス事例や、現場が登録したルールも検索して AI への指示に添えています。

自社開発の強み
- 短期間・少人数で作れる: AI エディターを使って開発し、約 6 週間で社内公開
- 現場の声をすぐに反映できる: 見積もりや発注を待たずに改修
- AI の進化に合わせて乗り換えられる: Gemini 2.5 Flash から始め、2026 年 10 月には 3.7 Flash へ
- 自社の知識を AI に持たせられる: 部署をまたいでミス事例のデータをつなぎ、校正に活用
- 低コストで続けられる: 既存の社内基盤とオープンソース、従量課金のクラウド AI で構成
システム更新の際に「データを外に出せること」を仕様に入れておくことで、AIシステムを自社開発できる形としました。
おわりに
人が「見逃したもの」をダブルチェックで救う
AI はテロップを完璧にチェックできるわけではありません。最終的に確認するのは人で、AI はその手前で「ここを見てほしい」と知らせる役割です。稼働直後から、人の目では見落としていたミスを数多く見つけています。
AI を使うサービスを放送用システムにつなぐのは、メーカーや専門の会社でなくてもできる時代になりました。今後も現場の声を取り込みながら、このシステムを育てていきます。
発表・展示のお知らせ
詳しくは、第 63 回民放技術報告会(11 月 20 日(金)15:00〜)で報告いたします。
InterBEE 会期中の『FYCS ブース』と『ラムダシステムズ様ブース』でも展示を予定しております。
